2011年03月23日

卒業シーズンによせて

毎日毎日目に入るニュースや情報が、
あまりに悲しいものばかりで、こんな時こそ頑張らないとと
分かってはいながらちょっと落ち込み気味だった。

しかし今日1つ嬉しいことが有った。

4年前に初めて受け持ったキャリア講義の一期生が卒業を迎え、
卒業生総代として答辞を読んだとの事で、その内容を是非私に
聞かせたかったが参加出来なかったのでメールで送ってきてくれた。

本人に了承を得たので、紹介したい。
心から感動し、日々学生のみなさんに発している言葉の重さと
この仕事の素晴らしさを感じさせて貰った。

ありがとう、そしておめでとうNさん。

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答辞
3月に入っても雪が降り、暖かくなったかと思えば寒くなる。
そんな不安定な気候が続く中、開花宣言が冬の終わりを
感じさせるようになりました。

本日は、牛尾学長はじめ、諸先生方、またたくさんのご来賓の方々に
ご臨席賜り、私たち卒業生のためにこのように晴れやかな卒業式
を挙行していただきまして、誠にありがとうございます。
卒業をスタートラインとし、大学での4年間の経験を胸に新しい
一歩を進んで行こうと思います。

思えば4年間はあっという間のことでした。
入学してすぐのこともよく覚えています。
芸術系の高等学校ではなかった私には、大学に入って授業の
ほとんどが芸術になることが面白くて仕方がありませんでした。
白い紙を見ながらそれが何色に見えてくるかという授業、
ジョルジョーネの『眠れるウェヌス』とティツィアーノの
『ウルビーノのウェヌス』を見比べる授業、鏡を使わずに
顔の形を手探りでつかみ、自画像を描く授業。

小学校、中学校、高校等学校で体験したことのない授業は
とても楽しく、絵が好きで大学に入った私はそれだけで
満足していました。
そんな中、キャリアデザインの授業で教わった一言は
私の大学生活を変えるきっかけになりました。

「苦手なことは今のうちに克服してください。
失敗は学生のうちにしかできません」。

「そうか。変わるなら“今”なんだ」。
そう思った私は、苦手な文章を書くことや人と話すことを
克服すべく新聞部に入りました。
頼れる優しい先輩と、同じ1年生とは思えないほど
しっかり自分の意見を言う意欲的な部員に刺激され、
私も頑張らなければという思いに駆られました。
新聞部の数人で滋賀県の地方紙に
『第3回湖族の郷アートプロジェクト』の記事を投稿する機会がありました。
取材をきっかけにプロジェクトにも参加するなど、
部活を通して様々な活動に参加するようになったことで、
新しい自分を見つけるような感覚がありました。

気が付けば文章を書くことも人と話すことも楽しくなっていた私は、
ある時『就職の声』という特集コーナーを担当しました。
その時に成安造形大学1期生の方に取材をし、こんな言葉をいただきました。
「大学を卒業する時点ではまだ『卵』の状態。自分が何になりたいかの前に、
自分に何ができて何ができないのかを知りなさい」。
この言葉は自分というものを見つめ直すきっかけになりました。

そして卒業する今、改めてこの言葉の重みを感じます。

4年間を思い返せば本当に不思議なことです。
絵を学びたい。そんな思いだけで入った大学で言葉に
し尽くせない様々な経験を通し、結果として絵を描くこと以外に
文章を書くことや話すことなどの新しい表現方法を見つける結果になりました。
それは自分について、また絵についても見つめ直すということになったのです。
一つの行動が大きく広がり、その一つ一つの出会いに意味があって、
こうして‘今’に繋がっています。

だから、ほんの些細な出来事やほんのわずかな言葉も大事にして
‘これから’に繋いでいきたいです。
私にとって、
この大学生活は真っ白なキャンバスに色をのせていくようなものでした。
大学に来てから自分の色を考えるようになったと思います。
この4年間で仕上げられた一枚の自画像はのちに何度も
見直すことになるでしょう。

これがある限りもしも自分の色を忘れても
またここに戻ってスタートがきれると思います。

このような充実した4年間を過ごせたのは迷ったときに
たくさんのアドバイスをくださいました先生方やサポートしてくださいました
職員の方々、立ち止まったときに急かさず見守っていてくれた家族、
そしてともに悩み歩んでくれた仲間たちの存在があったからです。
4年間の感謝を言葉で伝えきることはできませんが、
今まで本当にありがとうございました。成安造形大学がこれからも
多くの学生のスタートラインとなりますよう心よりお祈りし、
これを答辞とさせていただきます。
  


Posted by Hamanaka at 06:21Comments(0)日記